プロサッカー選手の前十字靭帯再断裂、UEFAの研究から

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こんにちわ、Calantスポーツリハビリ&パフォーマンスの爪川慶彦です
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プロサッカー選手の前十字靭帯再断裂、UEFAの研究から

スポーツは楽しい面もありますが不幸にも怪我というものも起きてしまいます
その怪我の中でも前十字靭帯の断裂というのは選手のキャリアに大きく影響を与える怪我です
前十字靭帯 (ACL: Anterior Cruciate Ligament)とは膝の靭帯の1つで、膝の安定性に大きく関わってきます
この靭帯を断裂したほとんどの選手が手術をして損傷した靭帯を再建します(前十字靭帯の再建手術のことをACLR:Anterior Cruciate Ligaent Reconstructionといいます)
ただし、手術で損傷した靭帯を再建したとしても、その後に再度靭帯を損傷してしまったり、損傷前と同じ程度の高いパフォーマンスを維持出来るかはわかりません
それゆえACL断裂をした選手はその後の選手寿命や競技レベルに大きく影響を与える可能性があります
今回、UEFA(欧州サッカー連盟)が2001年から2019年にかけて、述べ64チームを対象としたACLを断裂した選手に関しての研究を発表しました
その目的は3つ
1 ACLR後のACL再受傷率の把握(どの程度同じ怪我を再発させてしまっているか?)
2 2回目のACL受傷に関わる要素の把握(どんな要素が再発に繋がるのか?)
3 ACLR後のプロ選手としてプレイしている期間の把握(ACL受傷後、プロ選手はどの程度の期間トップレベルでプレイ出来ているのか?
このブログではこの研究内容を簡潔にまとめていきたいと思います
研究結果
述べ120名のプロサッカー選手がACLを損傷しACLRを受けました
この中から2名は研究から除外し、最終的に118名を対象として上記の目的を検査しました
目的1 ACLR後のACL再受傷率の把握
118名中21名(17.8%)がACLを再受傷
1回目と同じ膝を受傷したのが11名(9.3%)
1回目と反対側の膝を受傷したのが10名(8.5%)
1回目のACLRから練習に復帰し、ACLを再受傷するまでの平均期間は21.5ヶ月
半数以上(57%)のACL再受傷は練習に復帰してから2年以内に発生している
目的2 2回目のACL受傷に関わる要素の把握
1回目のACL受傷がノンコンタクトで起きた場合(他の選手や物、地面などとぶつからずに受傷した場合)
→2回目のACL受傷の発生率はそうでない場合と比較して7倍になる
1回目のACL受傷時に他の組織(半月板や軟骨など)に損傷がなかった場合
→2回目のACL受傷の発生率はそうでない場合と比較して3倍になる
目的3 ACLR後のプロ選手としてプレイしている期間の把握
1回目のACLを受傷してから練習に復帰し、その後も国内トップディビジョン(その選手が所属する国内リーグのトップのレベル、日本で言うJ1)でプレイしている期間の中央値は練習復帰してから3.4年
1回目のACLRから5年後もトップレベルで競技を続けている選手は全体の59.7%
1回目のACL受傷が25歳以下の場合、5年後もトップレベルで競技を続けているのは67%
1回目のACL受傷が26歳以上の場合のそれは51%
1回目のACL受傷が30歳以上の場合のそれは14%
その他
ACLRから練習復帰までの平均期間は192日(約6.4ヶ月)
ACLRから試合復帰までの平均期間は239日(約8ヶ月)
ACLRから5ヶ月で練習復帰したのが17/118名(14%)、6ヶ月で練習復帰したのが32/118名(27%)、7ヶ月で練習復帰したのが20/118名(27%)、8ヶ月で練習復帰したのが19/118名(16%)
ACLRから8ヶ月以上してから練習復帰をした13名はACLの再受傷は起こらなかった
ACLRから6ヶ月以内に練習復帰をした49名中、10名がACLを再受傷した
まとめ
今回の研究はUEFAがプロサッカー選手のみを対象として長期間かけて行った非常に価値のある発表だと思います
内容自体は他のACLに関しての研究と一貫している部分も多くありました
またプロ選手であればどのくらいの期間をプロ選手としてプレーできるのかというのは非常に重要になります
この研究ではその部分も数値として出ていたのが珍しいかなと思います
また、前十字靭帯の損傷は予防出来るのでれば予防することにこしたことはありません
ただ、1度起きてしまった場合はしっかりリハビリをして再発を防ぐということが重要になります
その点ではACLの手術をしてから8ヶ月以上経過してから復帰した選手の再発は0というのは、いつ練習に復帰をするかを判断する際に検討されるべきものかなと思います
本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました
参照文献
Della Villa F, Hägglund M, Della Villa S, et al