若年層の一つのスポーツ特化について

今回は全米アスレティックトレーナーズ協会(National Athletic Trainers' Association: NATA)が発表しているOfficial Statementという宣言をもとに、若年層のスポーツ特化についてまとめたいと思います
NATAはこの宣言で若年層の1つのスポーツへの特化を推奨しておりません。
1つのスポーツへの特化はなるべく遅らせる ”1つのスポーツへの特化”というは1つのスポーツを通年で年中ずっと行うという事です。若年層は色々なスポーツに参加すべきであり、それは総合的な身体能力と運動神経の向上、怪我のリスク低下につながります
2チーム以上に所属しない 若年層は1つのシーズンで1つのチームに参加すべきである。多くの若年層は1つのチームでは試合がない時期に練習を行い、同じ時期に違うチームで試合を行なっている。シーズン毎のチーム活動量の総量は怪我のリスクを知る上で重要な指標である(複数のチームに参加する事で、練習や試合の数が非常に多くなり、その分怪我のリスクが上がる) 例:冬期に雪で試合が出来ない地域のリトルリーグの室内練習に参加しつつ、屋内で行うミニバスの試合にも参加すると、リトルリーグとミニバスどちらの練習も試合も重なって体には過剰な負担となる
スポーツ活動をするのは1年の中で8ヶ月未満 若年層は1年の内で1つのスポーツを8ヶ月以上行うべきでない(1年の中で身体を休ませる期間を持つ)
1週間のスポーツ参加時間は年齢の数よりも低くする 若年層は1週間の練習や試合に参加する時間は、自分の年齢よりも長くなるべきでない。例えば、10歳のリトルリーグ選手は1週間で練習や試合を含めて活動量は10時間以内にする(例:1日2時間で5日間)
1週間に2日間は休む 若年層は1週間で2日間は練習にも試合にも参加しない日があるべきである
チーム活動後の休息とリカバリー 若年層はチーム活動のシーズンが終わった後には、そのスポーツから離れる期間を持つべきである
つまり、大きな括りでまとめると、若年層では色々なスポーツを行い1年のうちにスポーツをしない期間をつくるべきであるということを推奨しています
私もこれには賛成です
若年層には色々なスポーツに参加する事で自分の好き嫌いがわかります。まだ身体も脳も発達中ですから、色々なスポーツを行い色々な動きをする(投げる、走る、蹴る、掴む、振る、泳ぐ、潜る、踊る、担ぐ、打つ、殴るなど)事により、様々な動きに対応できるように成長します
私の印象ですが、色々なスポーツを経験した子の方が成長してからも運動能力は高いです。運動能力が高いというのは、様々な動きに対応することが出来、さらに自分がどのように動いているかが分かるという感覚が鋭いことが多いです(例えば、走る動きの中で膝をこう上げてと指導すると、運動能力が高い子はすぐにその通り出来る事が多いです。逆に私のような一般人は自分が頭の中で思い浮かべているイメージと実際の動きが違う場面が多く、それを修正するのにも時間がかかります)
このNATAはアメリカの団体ですので、アメリカの状況を前提として話しています。例えば、アメリカでは高校でも部活動はシーズン制を採用しており、通年で同じ部活が活動することはありません。学生は秋はアメリカンフットボール、冬はレスリング、春は陸上、夏は夏休みでスポーツはしないという選択が出来ます。さらに、1年生から卒業まで同じ部活動に入る必要もありません。1年時はスポーツ三昧だけど、2年目は文化活動づくしということも可能です
日本では部活動は通年制なのでNATAが推奨することをそのまま当てることは出来ません。ただし、参考になる部分もあると思います
個人的には部活動でシーズン制を取り入れた学校があれば、通年で部活動をしている学校と戦績や学業、生徒の満足度や卒業後の様子などを比較してみるのも面白いと思っています 少し話が逸れましたが、社会的にも若年層の1つのスポーツ特化は推奨されておらず、個人的には子供達には色々なスポーツを経験してもらい、楽しいと思ったことがあればそれを続けて欲しいと思っています
参照元 https://www.nata.org/sites/default/files/youth_sports_specialization_recommendations.pdf