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スポーツ中の心臓震盪について



「心臓震盪」もしくは「心震盪」という言葉をお聞きになったことがありますか?


似た言葉で「脳震盪」という言葉がありますが、こちらの方は認知度が上がってきたのではないかと思います


脳震盪は脳に物理的な衝撃などが加わったときに起こる機能障害のことです。頭をぶつけたり、頭が揺れたり、頭より下の身体への衝撃が頭に伝わった時にも起こります


心臓震盪も意味合いは同じで、衝撃が加わる場所が脳ではなく心臓になります


心臓震盪は胸への直接の衝撃(詳細には左心室への衝撃)が、脈拍のある1点で発生した時に起こります


例えば、野球のバッターがデッドボールで胸にボールを受け、さらにボールが当たったタイミングと脈拍のタイミングが偶然にも一致した時に心臓震盪が起こる場合があります


衝撃の強さですが時速55〜65kmのスピードでも起こると報告されており、衝撃の強さよりも衝撃のタイミングの方が心臓震盪につながる可能性があります


心臓震盪が起こると普段は一定である脈拍が異常になる「心室細動」という状態になり、これはすぐに処置を行わないと死に至ります


アメリカでは1995年から188名のスポーツ選手が心臓震盪で亡くなっております

さらにその188名の平均年齢は14.7歳で、96%が男性だったとの事です


このデータを参考にすると、中学生〜高校生男子が最もリスクが高いグループという事になります


心臓震盪は健康な人にも起こり得るので、予防をすることは難しいと言われています

ただし、ボールの場合はより硬い方が心臓震盪につながりやすいと言われています(ブタの研究ですが)


もし心臓震盪が起きた場合(今まで全く健康だった人が胸に衝撃を受けて倒れた場合など)、唯一の治療方法はAEDなどを使って心室細動をストップすることです


心室細動が起きてからは1分毎に除細動(心室細動をストップすること)の成功率は10%低下すると言われています


つまり10分経過した場合は、ほぼ助からない計算です


日本では119番をしてから救急車が来るまで平均6分と言われており、心臓震盪の際にすぐさまAEDを使用することは最優先事項です


中学〜高校生が一番リスクの高いグループであることを考えると、彼らが運動を行う学校やスポーツチームのグラウンドなどにはAEDを用意し、もし心臓震盪が起きた場合は救急車が来る前にAEDを使用することが生存率を高める事につながります


全米アスレティックトレーナーズ協会(NATA)では心臓震盪に関しての声明を発表しており、そこで心臓震盪を予防する為に10の提言を述べているので、ここでそれを少し訳したいと思います


1 監督、親、審判、選手に心臓震盪が起きる原因と起きた場合の症状を認知させる

2 全ての監督やコーチ、審判に心肺蘇生法、AEDの使用方法、応急処置の訓練を受けるように促す (自治体や日本赤十字社などでも受けられます。学校の先生や部活動のコーチ、顧問の方などは是非)

3 運動施設にAEDを適切に配置する (アメリカでは州によって異なるかもしれませんが、運動施設やジムではたとえ施設の隅っこでAEDが必要な患者が出ても、2分で歩いて戻ってこれる場所にAEDを設置しなければいけないという法律があります。ですので、施設が大きければ大きいほどAEDの数も多くなります)

4 監督や審判に、心臓震盪が起きた場合は心肺蘇生法やAEDはすぐさま実施しなければいけないということを認知させる

5 緊急時の行動計画をあらかじめ作っておく。親、監督、審判などもこれに参加させるべき(緊急時の行動計画とは、例えば誰が119番するのか(審判?監督?)、誰がAEDを取りに行くのか(他の選手?親?)、救急車はどこから施設に入るのか(表口?裏口?)を明記したものです)

6 試合や練習中に胸の防具やプロテクターを使用する(この分野はまだ研究は進んでおらず保護具によって心臓震盪が予防できたと証明はされていないが、NATAとしては保護具の使用を推奨する)

7 防具やプロテクターは安全基準に則ったものを使用方法通りに正しく使用する

8 選手に自分自身の守り方を教え、胸への衝撃を避けるようにさせる。シュートなどをブロックする際に体を投げ出さないようにさせる

9 若年層の野球やアイスホッケーチームや協会に軟らかいボールやパックの使用を勧める

10 練習場や試合場は平坦で綺麗な状態を保つ


参照文献



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